地 殻 変 動 観 測

地殻変動観測とは

地殻変動と言う言葉は地学・地球物理現象ばかりではなく「政界を揺るがす地殻変動」などのように社会的・政治的にもよく用いられています。辞書によると地殻の内部力により地殻に起こる運動などと書いてありますが、我々が住んでいる地球表面の変動を地殻変動と呼んでいます。地殻の変形としては水平変動、上下変動、傾斜、歪などいろいろな形で現れます。


地震発生における基本量は振動と変形(地震波と地殻変動)

1986年と1987年の伊豆大島の噴火にともなった地殻変動は大学および官庁の地殻変動観測所の歪計に広範囲に観測されています。この結果はマグマなど物質の移動にともなった活動には広範囲の地殻変動を生じさせることがあるということ及びある程度の大きさの変動が生じれば現在の観測方式で地球内部の活動を十分検知可能であることを示唆し希望をもたせる出来事でした。
また1989年、7月の伊東沖における群発地震発生から海底噴火に至る一連の活動も傾斜計や体積歪計に見事に記録されており、地殻活動に十分近い高精度の観測が可能であれば活動の変化を検知出来ることを示唆しました。テレメーターによる高密度微小地震観測による震源の深さ変化の決定などとともに地震と地殻変動の高密度・高精度観測が地殻活動の推移予測に重要であることが明かになりました。


これからの地殻変動観測研究

最近の震源過程等の研究によると地震発生場の不均質性の数qの広がり、断層の複雑性が明かになっています。また、マグニチュードが小さいにもかかわらず伊東沖群発地震にともなった異常な歪・傾斜変動などの地殻変動が5〜10km離れた観測点で明瞭に観測されています。以上のことと地震波の到達範囲と比較して地震にともなった地殻変動の及ぶ範囲の小さいことを考慮すると、今後、重要地域には二等三角点程度の広がり、すなわちlOq間隔程度の地殻変動観測点配置をして観測研究を進めることが必要と考えます。


地震予知の本命は地殻変動観測研究

物質が変形し破壊する過程は基本的なものであり、地震発生(破壊)前の変形(地殻変動)は本質的であり必ず伴うものであると考えられます。地殻変動のない地震発生はないと考えられ、充分近くで高精度の観測をしていれば必ず前兆的変動が観測されると考えられます。